「海外のサポーターは熱狂的」とかよく言われますが、実際にイタリアではどうなのか、という話。この種の調査は定期的に行われていて、ぼくも何度か原稿のネタにしたことがあります。これは2007年版。
「カルチョはイタリアの国民的関心事」というのは、ここイタリアでも非常によく使われる常套句である。しかし、それではその関心の度合いというのは一体どのくらいのものなのか、ということになると、これはよくわからないところがある。
常々そう思っていたところに、イタリア社会のカルチョへの関心度は数字にしてどのくらいなのか。それを調べた調査結果というのが、イタリアで発売部数トップを争う日刊紙『ラ・レプブリカ』に掲載されていた。これがなかなか興味深いので、ちょっと取り上げることにしよう。
調査対象となった15歳以上の老若男女1329人のうち、「あなたはサッカーチームのサポーターですか?」という問いにYESと答えた人の割合は45.6%。理屈の上では、「カルチョに積極的な関心を持って応援している人は、イタリア全国民の半分弱」ということになる。ただし、45.6%というのは、あくまで老若男女すべて合わせての話。これが男性に限るとサポーターの割合は58.3%まで上がってくる(女性は33.3%)。
この数字が多いのか少ないのかは、評価が割れるところだろう。でも、生活実感として、身の回りにいる人を無作為抽出してみると、割合としてはそのくらいかな、という気もする。日本で「あなたはプロ野球のファンですか」とか「あなたは応援するサッカーチームがありますか」とか聞いたら、おそらくこれよりも低い数字が出るのではないだろうか。
面白いのはここから先、YESと答えた全体の45.6%の人たちを対象として、さらに掘り下げた部分である。ちなみに、ここから先の数字は、YESと答えた「サポーター」が母数(=100%)となる。
「あなたのサポーター度を10段階で評価すると」という問いに対しては、6以下の数字を挙げた人の割合は26.5%、7〜8と答えた人が29.8%、そして9〜10と答えた人が何と43.4%にも上っている。イタリア男の4人に1人はサッカーの話になると目が血走ってくる理屈になるわけで、これは割合としてはかなりのものかもしれない。
「応援するチーム」で最も多いのは、やはりユヴェントスで27.7%。ミラン(22.6%)、インテル(16.1%)がそれに続き、この3チームだけで計66.4%となる。全体の3分の2は「ビッグ3」のサポーターというわけだ。これに続くのがナポリ(8.5%)、ローマ(7.2%)、大きく落ちてラツィオ(3.2%)。それ以外のチームのサポーターは、全部合わせても14.7%に過ぎない。マーケットはやはり、ビッグクラブの寡占市場なのである。
興味深いのは、2年前に行われた同じ調査と比較すると、ユヴェンティーノの比率が32.4%から27.7%に、何と4.7ポイントも減少しており、その一方でミラニスタ、インテリスタがそれぞれ2.2ポイント、3.1ポイント割合を増していること。ユヴェンティーノの減少は、もちろんカルチョスキャンダルに辟易した人が少なくなかったからだろう。実力で勝ち取ったと信じていた勝利が、実はズルして手に入れたものだったと言われて、幻滅しない方がおかしいというものだ。
さて、イタリアのサポーターはしばしば、好きなチームを応援する以上に嫌いなチームを罵倒することに熱心である。ゴール裏のコールやチャントも、その何割かは相手や敵サポに向けられた聞き苦しい罵倒だったりする。この調査でも「積極的に反感を感じるチームはありますか」という問いに、半数以上(52.6%)の人がYESと答えている。
最も憎まれているチームは、やはりユヴェントスで、サポーター全体の21.7%が反感を持っている。それに続くのはインテル(16.0%)、そしてミラン(6.6%)。面白いのは、2年前と比較するとユヴェントスを嫌いな人の割合がやや低下(-2.7%)しているのに対して、インテルを嫌いだという人が大きく増えている(+9.7%)こと。逆に、ミランを嫌いだという人は大きく減った(-7.3%)。
2年前のインテルは、人々の好感と同情を集める憎めないチームだった。クラブを愛して止まない会長が、毎年たくさんのカネを使ってスター選手をかき集めているのに、もう15年以上もスクデットから遠ざかっている、気の毒な存在だったのだ。実際、2年前の調査結果では、ユヴェンティーノが最も敵視するチームはミランであり、ミラニスタが敵視するのもインテルよりむしろユヴェントスと、インテルはすっかり蚊帳の外だった。
しかし、ユヴェントスから剥奪されたスクデットをちゃっかり胸につけ、圧倒的な強さで昨シーズンの優勝を勝ち取ってしまった今となっては、もはや誰も同情などはしてくれない。今シーズンは、カルチョスキャンダルの膿を一掃してクリーンな優等生イメージを打ち出そうとしているユヴェントスよりもむしろ、インテルが憎まれ役の筆頭という構図になっているようにすら見える。
とはいえ、強いチームが反感を買うのは世の常というもの。インテリスタだって、勝てなくて同情されるよりは、勝って嫌われる方がずっといいに違いない。□
(2007年8月25日/初出:『footballista』)