2015年1月10日 その他の話題

2005年のセリエAこの1試合:ミラン0-1ユヴェントス(2005.12)

セリエAがまだ華やかだった10年前、04-05シーズン終盤にスクデットを争うミランとユヴェントスが直接対決でぶつかった試合について、創刊直後の『STAR Soccer』に書いたテキスト。

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ミラン0-1ユヴェントス(第35節・2005年5月7日)

セリエA2004-05シーズンも残りあと4試合、23勝7分4敗(勝ち点76)と、まったくの横並びで首位を争っていたミランとユヴェントスが、8万人の大観衆で埋まったサン・シーロを舞台に雌雄を決した直接対決。

開幕以来ここまで、一度も首位から滑り落ちることなく走り続けてきたユヴェントスは、しかし、クラブがシーズンの第一目標に掲げていたチャンピオンズリーグ(以下CL)で、リヴァプール相手にまったく不甲斐ない準々決勝を戦い、あえなく敗退を喫していた。その上さらにスクデットまで逃せば、カペッロ監督1年目のシーズンは、完全なる失敗の烙印を押されて幕を閉じることになってしまう。ここで敗れたらもう後がないという背水の陣で、この決戦に臨んだ。

一方のミランは、この時点でまだスクデットとCL、二冠の可能性を残していた。CLの準々決勝ではインテルとのダービーを制し、準決勝ではPSVに予想を遥かに上回る苦戦を強いられたものの、アウェーゴールの差で何とか勝ち上がりを決めている。

PSVとの準決勝第2レグが行われたのは、わずか4日前。立ち上がりから劣勢に立たされ、2点のリードを許して敗退の恐怖に晒されながら、終了直前にアンブロジーニがゴールをねじ込んで九死に一生を得るという、極限的に困難な試合だった。

体力と神経を死ぬほどすり減らした戦いの末、CL決勝への切符を手にして安堵のため息をついた後に、ほんの数日でリチャージするのは簡単なことではない。そしてそもそも、シーズンの第一目標はやはりビッグイヤーの方だった。

試合の立ち上がりには、テクニックで上回るミランがユーヴェのプレスを易々とかわし、敵陣深く攻め込む場面も見られた。しかしそれも最初の5分あまりのこと。ほどなくユーヴェが、ファウルを多用して相手の攻撃を分断し、奪ったボールは素早く前線に展開するというお得意の戦い方でリズムを掴み、主導権を手元に引き寄せた。そして前半28分、デル・ピエーロのクロスをトレゼゲが頭で押し込んで先制する。

そこからの残り1時間あまりは、緊迫はしていたものの、プレーのインテンシティが低い、凡戦と言わざるを得ない内容だった。それは、追う立場に立たされたミランの側に、勝負に対するギリギリの執着が不足していた、その必然的な結果であるように見えた。

この直接対決が、04-05シーズンのセリエAにおいて最も重要な一戦であったことに、疑いの余地はない。しかし、スクデットの行方を決定づけた試合は、ということになると、それはむしろCL準々決勝のユーヴェ対リヴァプールであり、準決勝のPSV対ミランだったように思える。

ユヴェントスやミランのように国際的な人気と実力を誇るビッグクラブにとって、もはや戦いの優先順位はCLにある。昨シーズンの結末は、スクデットというタイトルの価値と位置づけが、相対的に低下していることを否応なく見せつけるものではあった。

しかし、である。スクデットを妥協したミランは、すべてを賭けて臨んだCL決勝で、「6分間の悪夢」の末、一度は両手をかけたビッグイヤーを失い、無冠でシーズンを終えることになった。そして今シーズンになってもなお「イスタンブールのトラウマ」に悩まされ、チームが持つ本来のポテンシャルを発揮できずにいる。一方、ユーヴェはといえば、今シーズンも開幕から首位を独走、CLでもまったく危なげない戦いぶりでベスト16進出を果たしている。

勝ち取ったスクデットと逃したスクデット、ひとつのタイトルが及ぼす波動は、シーズンを越えて現在にまでも及んでいる。そして結局のところ2005年は、ユーヴェが28度目のスクデットを勝ち取り、ミランが信じられない形でビッグイヤーを逃した年として記憶されることになるのだ。■

(2005年12月16日/初出:『STAR Soccer』)

About admin

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 新しい著書(共著)『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が好評発売中。 他の著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。

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