2014年12月13日 クラブ

ナポリ、セリエC1からの再出発(2004.09)

今セリエAを戦っているナポリは、厳密に言うと80年代にマラドーナを擁してスクデットを2度、UEFAカップ1を一度勝ち取ったクラブとは別物です。というのも、その旧SSCナポリは2004年に一度破産・消滅しているから。その経緯をまとめた当時のテキストです。

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80年代後半にディエゴ・アルマンド・マラドーナを擁して、スクデット2回、UEFAカップ1回を勝ち取った南イタリアの名門・ナポリがセリエAの舞台から姿を消して3年が過ぎた。

00-01シーズンに、不甲斐ない戦いぶりで降格を喫してからは、セリエBでも低迷が続き、この2シーズンは下位が指定席。だがそれ以上に大きな問題は、クラブが陥っていた深刻きわまりない財政難だった。

昨シーズン末の時点で積み重なった負債は6700万ユーロ(約90億円)という莫大な数字。ピッチの上ではなんとかB残留を果たしたものの、今シーズンのセリエBに登録するための財務基準が満たせず、8月1日、SSカルチョ・ナポリは破産を強いられてしまう。2年前のACフィオレンティーナに続いて、カルチョの歴史を彩った偉大な名門がまたひとつ、破産という形で姿を消すことになった。

フィオレンティーナは、破産の後、フィレンツェ市長が新会社を設立して旧クラブの権利を引き継ぎ、セリエC2(4部リーグ)から再スタートを切ることができた。しかし今回のナポリの場合は、旧SSカルチョ・ナポリの権利を引き継ぐことを狙った新会社がいくつも設立され、その継承権争いが裁判所の破産審査官に委ねられるという、これまでにない形になった。

ユーヴェ、ミラン、インテルのビッグ3に次ぐサポーター数を誇るナポリの市場に魅力を感じたのだろう、ペルージャのガウッチ、シエナのデ・ルーカ、ウディネーゼのポッツォと、すでにセリエAのクラブを所有するオーナーも、それぞれ自前で出資して会社を設立し、継承権争いに参入した。

裁判所が1ヶ月にわたる審査を経て継承権を与えたのは、しかし、これまでカルチョの世界とは何の関わりもなかった独立系の映画プロデューサー、アウレリオ・デ・ラウレンティスが設立したナポリ・サッカーという名前の会社だった。決め手になったのは、デ・ラウレンティスが現金で2500万ユーロ(約34億円)という買収金を用意したこと。セリエAの3人の会長たちには、そこまでの資金力はなかった。

こうして、ナポリ・サッカーという(イタリアにしては)奇妙な名前のクラブが、いわゆる「ナポリ」として再スタートを切った。チームが登録されたカテゴリーはセリエC1(3部リーグ)。これは、今年の5月に制定された、破産クラブの権利継承に関するサッカー協会の新ルール(以前在籍していたリーグのひとつ下のカテゴリーから再出発できる)の恩恵によるもの。

セリエC1は、すでに9月10日に開幕していたが、サッカー協会は今回の特殊事情を勘案して、ナポリに対して3週間の猶予を与え、その間に新チームを組織して第3節からリーグに参加するという便宜を図った(1、2節は後で消化)。

新オーナーは、クラブ運営の責任者であるゼネラル・ディレクターに、ウディネーゼを長年支えてきたピエルパオロ・マリーノ、チームの新監督にジャンピエロ・ヴェントゥーラ(元カリアリ、サンプドリアなど)を迎えて、わずか1週間でゼロからチームを作り上げる。メンバーには、GKベラルディ(前レッジーナ)、DFイニョッフォ、MFガッティ(ともに前ペルージャ)FWソーサ(元ウディネーゼ)といったセリエA経験者が顔を揃えた。セリエBでも十分上位を狙える布陣である。

新生ナポリのデビュー戦となった日曜日、スタディオ・サン・パオロには、マラドーナ時代を彷彿とさせる、しかしセリエC1にしては異例の6万人という大観衆が集まり、ナポリの新たな船出を祝った。デ・ラウレンティス会長は、毎年昇格を繰り返して2シーズンでセリエA復帰を果たし、かつての栄光をナポリに取り戻すと公約している。フィオレンティーナと同様、最短距離でセリエAの大舞台に水色のユニフォームが戻ってくることを祈りたい。■

(2004年9月10日/初出:『エル・ゴラッソ』連載コラム「カルチョおもてうら」)

About admin

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 新しい著書(共著)『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が好評発売中。 他の著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。

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