2014年10月20日 イタリアサッカー雑感

イタリアのクリスマスと年越しとサッカー(2005.12)

もうクリスマスは過ぎてしまいましたが、年が明ける直前にこの話題をひとつ。ちなみにセリエAの冬休みは、選手協会の主張が受け入れられて、昨シーズンからまる3週間取られるようになりました。

今シーズンも、ほとんどのクラブが12月23日から1月1日まで完全オフ。1月2日から練習を再開して、13日のリーグ再開に備えるというスケジュールです。もちろんこの他に、夏には最低4週間の完全オフが保証されています。

つい最近シーズンが終了した(まだ終わってない人もいる)日本代表の皆さんは、1月15日のキャンプに80%のコンディションで集合しろと言われているそうで、シーズンオフは実質ゼロ。これで来シーズン、パフォーマンスを落としたり壊れたりしなかったら、それだけで奇跡ですよね。

というわけで、もうすぐ2007年もおしまいです。どうかよいお年をお迎え下さい。Buone feste e felice anno nuovo!

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クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝うキリスト教の祝日だというのは、誰もが知る通り。でも、そのシンボルということになっているサンタクロースやクリスマスツリーは、いずれもドイツや北欧など、欧州でも北に位置する国々の土着文化が起源であり、イタリア、フランス、スペインといった南欧のカトリック諸国にとっては、20世紀に入って広まった「輸入文化」でしかない、というのは、知らない人も多いかもしれない。

カトリックの総本山・ヴァティカンを擁する保守的なキリスト教国イタリアにおいて、クリスマスは、イヴの深夜に教会で行われるミサで神の御子たるイエス・キリストの誕生を祝福し、25日の昼には家族揃って伝統的なご馳走をいただく、1年で最も神聖な祝日である。少なくともタテマエの上では、イタリア人なら誰もがそうするべき伝統的な習慣だ。日本でいえばお正月みたいなもの。もちろんカルチャトーレ(プロサッカー選手)だって例外ではあり得ない。

というわけでイタリアサッカー界も、クリスマス前から1月初めまでの約2週間は、リーグ戦が冬休みになる(今シーズンは12月21日が年内の最終節)。最低でも12月24日から26日までの3日間はクラブもオフィスを閉め、選手も完全にオフになる。もちろん、家族とともに過ごすための聖なるお休みである。

クリスマスに宗教的な色彩が強く残っているイタリアではあるが、だからといって商業的な側面が疎かにされている(?)わけではない。そもそもはアメリカ人の発明品みたいなものであるクリスマスプレゼントの習慣(赤白のサンタクロースを広告でプロモートし、世界に広めたのはコカコーラだった)は、今やこの国にもしっかり根付いている。

イギリスやアメリカでは、ビジネスの相手にプレゼントを送るのは贈賄にあたるという認識があるようだが、イタリア人はそういう固いことはいわない。送って満足、もらって嬉しい、みんなハッピーなのに何が悪いのだ、というわけだ。

クラブから審判へのプレゼント攻勢が一時期エスカレートし、数年前にはローマがセリエAの主審全員にロレックスの腕時計を贈って、さすがにこれは問題になった。今ではどのクラブも、シャンパンやお菓子の詰め合わせ程度でお茶を濁しているようだ。

最近はシーズンが過密日程ということもあり、クリスマス休みは選手がリフレッシュするための貴重な機会だと考えられるようになった。1週間くらいのまとまった休みを与えるクラブも増えている。

ちかごろは宗教心の薄い不信心者も少なくないので、この休みを利用して南の島で充電する選手も多い。昨年などは、モルジブ(ちなみにイスラム教国である)まで出かけてインド洋大津波に呑まれそうになった選手が何人もいたくらいだ。

世間では「クリスマスは家族と。新年は好きな人と」と言われるくらいで、大晦日の夜は、友人や恋人と盛り上がって過ごすのがイタリアの一般的な習慣だ。日本とは、クリスマスイヴと大晦日の位置づけがひっくり返っていると考えればいいだろう。

しかし、カルチャトーレの皆さんは、そうそう羽目を外してもいられない。通常、12月28日か29日には再集合して練習が再開される。ほとんどのクラブは1月1日の練習を休みにするが、その前後は通常営業だ。クリスマス休みにちょぴりリフレッシュしたら、年末年始も含めてみっちり練習。1月2週目(今シーズンは8日)にはもうリーグ戦の再開である。

その頃にはクリスマスの思い出などとっくに消え去り、シーズンが終わる5月半ばまで、勝った負けたのハードな日々が続くことになる。■

About tifosissimo

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。

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