週末のローマダービーに向けての第2弾は、06-07シーズン秋のダービー前にプレビューとしてお遊びで書いた、ローマOBヴィンチェンツォ・モンテッラ(当時サンプドリア)とラツィオOBアレッサンドロ・ネスタ(当時ミラン)の架空電話対談。言っておきますが100%「エア」です。イタリア代表のチームメイトだった2人(ともに当時はそろそろ現役を終えようかというタイミング)が、ローマ、ラツィオの一員としてダービーを戦った日々を回顧しつつプレビュー、という趣向です。ご存じの通りモンテッラは現在ミラン、ネスタはNASL(北米2部)のマイアミFCで監督を務めていますが、「フランチェ」ことフランチェスコ・トッティは、さらに9年が過ぎた今もなお40歳で現役続行中というところが素晴らしい。今回のダービーも

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モンテッラ(M):チャオ、サンドロ。俺だよ、ヴィンチェンツォ。景気はどうだい?

ネスタ(N):やあヴィンチェンツォ。珍しいじゃない。こっちは3日おきに試合試合でもう身体がガタガタだよ。そっちこそジェノヴァはどうだい?先週いいゴール決めてたじゃない。

M:いやあ、最初から出れるってのはいいもんだね。ここ何年も途中出場ばっかでマジ頭来てたからさ。ところで、来週ダービーあるだろ。懐かしいよな。覚えてるかあの5−1。

N:相変わらず嫌味な奴だな。忘れるわけないだろ。お前に4発も決められて。おまけにあれが俺のラストダービーだったんだよ。ラツィオ一筋でキャリアを終えるのが夢だったのに、あんな試合を最後にミランに売られて来ることになっちゃって……。

M:気の毒だよな。お前本物のラツィアーレだもんな。俺もダービーはあの4ゴールで最後だったんだ。カペッロの野郎……。お前最後にラツィオに戻る気はないの?

N:あの会長がいる限り絶対嫌だね。「もう終わった選手はいらない」ってマスコミに言ったんだよ。あいつのおかげでラツィオが潰れなかったことは事実だけど、必死なのは自分の商売に利用したいからで、本当にラツィオを愛してるわけじゃないに決まってるよ。ラツィオを愛してたら俺に戻ってきて欲しくて当然だろ。

M:お前本物のラツィアーレだもんな。でも今度のダービーはローマが勝つだろうやっぱり。

N:うちはあのケチ会長のおかげで戦力が足りないから、慣れない連戦でみんなボロボロなんだよね。レデズマはいないし、マウリも怪我しちゃったし、ロッキも調子落ちてるし。でもここで負けるとマジで降格ゾーンが近づいて来るから、何とか踏ん張ってもらいたいよ。デ・シルヴェストリとかコラロフとか、若くていいDFが出てきたのが救いかな。

M:ローマはフランチェがCLで足捻挫したんだよな。

N:ああ。でも俺たちとの試合は休んでも、ダービーには意地でも出てくるよ。

M:あいつ今でもスクデットよりもダービーで勝つ方が大事だって本気で思ってるからな。あんな凄いプレーヤーなんだから、ローマなんてさっさと出て行けばバロンドールだって獲れただろうに、お山の大将がそんなにいいかよ。

N:でもローマも、カペッロが逃げた後は悲惨だったのに、スパレッティがよく立て直したね。マジでいいサッカーしてるもんな。

M:あのゼロトップな。あれは元々、一昨年俺が怪我したせいでフランチェを前で使うしかなくなって、それで始まったシステムなんだ。それがうまく行き過ぎちゃって、俺が復帰したときにはポジションがなくなってた。スパレッティの野郎……。

N:ははは。気の毒だったね。でもローマも怪我人けっこう多いね。アクイラーニ、タッデイ、ペロッタも出られないのかな。なんかお互い満身創痍だね。

M:もう昔みたいに金ないし、層が薄いのは仕方ないよ。まあローマはフランチェがいればどうにかなるけどね。

N:足痛いんだったら無理しないで休んでればいいんだよ。フォルツァ・ラツィオ!!

M:お前本物のラツィアーレだよ。俺はもうローマはどうでもいいや。フォルツァ・ドリア!

(2007年10月23日/初出:『footballista』)

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片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げ、カルチョそして欧州サッカーの魅力をディープかつ多角的に伝えている。 最新作は『チャンピオンズリーグ・クロニクル』(河出書房新社)。他の著書に『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)、『モウリーニョの流儀』(河出書房新社)、『モダンサッカーの教科書』(共著、ソル・メディア)、『アンチェロッティの戦術ノート』(共著、河出書房新社)、『セットプレー最先端理論』(共著、ソル・メディア)、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』(共著、光文社)、訳書に『アンチェロッティの完全戦術論』(河出書房新社)、『ロベルト・バッジョ自伝』(潮出版社)、『シベリアの掟』(東邦出版)、『NAKATA』(朝日文庫)など多数。