2009年に出した著書、『モウリーニョの流儀』。
これまで訳書は8冊ほど出してきましたが、自分で書いた著書はこれが初めてです。
ぼくのこれ以前の仕事を(多かれ少なかれ)ご存じの方々は、なんで片野がモウリーニョ本なのか、という疑問を抱かれたかもしれません。その点については、以下にコピペする本書の「あとがき」を読んでいただければと。
もしご興味を持っていただけたら、書店で一度手に取ってご覧下さい。もちろん、AmazonなどのWEBブックショップで直接ご注文いただいてもOK。ご購入の上ご一読いただければとても嬉しいです。どうぞよろしく。
あとがき
本書は、いまサッカー監督として世界で最も大きな注目と評価を集めているジョゼ・モウリーニョがイタリアの名門クラブ・インテルの監督に就任した1年目のシーズンを、ニュートラルな立場から観察し描いたノンフィクションである。
イタリアで活躍するポルトガル人監督の仕事を日本人記者が描く、という構図は、いささか奇妙に映るかもしれない。しかし筆者は、本書に存在意義があるとすれば、まさにその点ではないかと考えている。
筆者は14年前からイタリアに生活の基盤を置き、イタリアサッカーを主対象にした取材・執筆・翻訳を仕事にしてきた。端っことはいえカルチョの世界の内側にあって、その外からやってきたモウリーニョを迎え入れる立場にあったわけだ。
しかし同時に筆者は、モウリーニョがそうであるのと同様、イタリアにおいては外国人であり、その意味においてアウトサイダーでもある。イタリアという社会、カルチョの世界が自然なもの、自明のこととしている考え方や事柄がしっくりこない、すんなり理解できないということも稀ではないし、逆にその違和感に説明をつけることが仕事の一部になってもいる。
イタリアとモウリーニョ、それぞれの視点を借りて物を見ることができる一方で、そのいずれにとっても他者であるがゆえに、どちらからも距離を置いて冷静に観察することもできるというのは、ある意味で非常に恵まれた特殊な立場だ。
この立場からイタリアにおけるモウリーニョの1年間を追うことによって、イタリアというフィルターを通して見えてくるモウリーニョという監督の卓越性と革新性、そして人間的魅力を描き出すと同時に、モウリーニョというフィルターが浮かびあがらせるイタリアサッカーの現在、カルチョの世界の奥深さを、日本のサッカーファンに伝えることができるのではないか、というのが、この本を書きたいと思い立った一番の動機である。
それがどこまでうまくできたかは、読者のみなさんのご判断に委ねるしかない。しかし少なくとも、モウリーニョという監督、インテルやイタリアサッカーに関心がある方はもちろん、すべてのサッカーファンに興味深く読んでいただける内容になったとは思う。
2009年7月28日 片野道郎