ローマダービーの歴史(2007.10)

今週末はローマダービー。それにちなんでいくつかダービー絡みのテキストを上げていくことにします。とりあえずヒストリーから。9年前、ローマはスパレッティ(第1期)、ラツィオはデリオ・ロッシが監督で、それぞれ2位、3位でシーズンを終えた2006-07秋のダービー前に書いたもの。その後それぞれELにも出られない低迷期を経験してきましたが、今シーズンは1ポイント差で2位と4位。どちらもウルトラスがクラブや警察と対立しているのでスタジアムの盛り上がりはMAXとは行かない見通し大ですが、少なくともピッチ上では熱いダービーになりそうです。

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ローマに生まれた男の子には、人生、2つの選択肢しか与えられていない、と良く言われる。もちろん、ロマニスタになるか、ラツィアーレになるかのどちらかだ。

なにしろ、初対面の挨拶代わりに「デ・ケ・セイ?De che sei?(お前どっち?)」と訊ね合って、敵か味方かを見極めないと落ち着かないという土地柄である。ラツィオとローマのライバル関係は、それこそローマという街の生活の基盤、日々の糧のようなものだ。サポーターはスクデットよりダービーに勝つことをチームに要求し、その結果は、次のダービーまで半年間の「都市の気分」を決定づける。

ローマとラツィオが初めて対戦したのは、1929年12月8日。ラツィオは創立1900年だが、ローマは1927年に3つのクラブが合併して生まれた、セリエAでは比較的歴史の浅いクラブである。それから現在までの78年間、セリエAでは計128試合が戦われ、ローマ42勝、ラツィオ32勝、引き分け54という結果になっている。

意外かもしれないが、ローマダービーが人口300万人の首都を真っ二つに割る現在のような盛り上がりを見せるようになったのは、それほど古い話ではない。ラツィオが1960年代と80年代に計11シーズン、セリエBに降格していたこともあり(ローマも50年代に一度B落ちしている)、ダービーが毎年コンスタントに開催されるようになったのは、80年代末以降になってからのことなのだ。

そして90年代後半、両クラブが共に資金力のあるオーナーの下で、セリエAの上位を争うようになると同時に、ローマダービーはスクデットの行方を左右する重要な一戦として、全世界が固唾を呑んで見守る超ビッグマッチとなった。

ラツィオがエリクソン監督とマンチーニを獲得してスクデットに照準を合わせ、ローマはそのラツィオをクビになったゼーマン監督を招聘して、スペクタクルな攻撃サッカーを志向した97-98シーズンは、セリエAとコッパ・イタリアで4度のダービーが戦われ、ラツィオが全勝する。

ロマニスタがこの屈辱を心から晴らすためには、99-00シーズン冬、最初の20分で4ゴールを叩き込んだ胸の空くような4-1、そして翌00-01シーズン冬、ラツィオのシンボル・ネスタのクリアミスがネグロに当たってゴールに飛び込むオウンゴールによる、痛快この上ない1−0という、2つの勝利を待たなければならなかった。

どちらも絶対に負けられぬ意地を賭けた戦いゆえ、試合はナーヴァスな展開の末に接戦や引き分けで終わることがほとんど。モンテッラが4ゴールを叩き込んでローマが5−1で圧勝した01-02シーズン春のダービーは、先の4-1と並ぶ数少ない例外である。

相次いでスクデットを勝ち取った2000年前後をピークとして、ローマ、ラツィオの両クラブは00年代前半、深刻な財政難に陥り中位に低迷、ダービーも一時の華やかさを失い、単なるローマっ子だけの関心事に逆戻りしかけた。しかし、ローマがスパレッティ監督の下で復活を果たし、ラツィオもロティート会長=ロッシ監督体制によってCL出場権を手に入れるところまで盛り返した現在、ローマダービーは再びビッグマッチとしての魅力を取り戻している。

昨シーズンは秋がラツィオの3-0、春が0−0のドローだった。共に就任3年目を迎えるスパレッティ対ロッシの監督対決は4試合で1勝2分1敗とまったくの五分。今回は果たしてどんなドラマが生まれるか。■

(2007年10月23日/初出:『footballista』)

About admin

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 新しい著書(共著)『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が好評発売中。 他の著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。

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