4年前のドイツワールドカップ期間中に書いた原稿の棚卸しその2は、グループリーグ2巡目の終わりに書いた短いスタッツ(統計)もの。スタッツのデータを掘り下げる作業は、footballista紙上で河治良幸さんが、CLを巡って連載されているものが、これよりもずっと深くて興味深いです。

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グループリーグの2巡目が終わったところで、大会のオフィシャルサイトで公開されている簡単なスタッツ(試合の統計データ)を、ちょっと弄んでみた。ボールポゼッションとシュート数について、試合結果との相関性を調べてみたのだが、これがなかなか興味深い。

まず、ボールポゼッションについて見てみよう。2巡目までの全32試合の中で、両チームのポゼッションに明らかな差(5%以上)がついたのは17試合、僅差(4%以内)に収まったのは15試合。割合でいうと53:47だから、ほぼ半々ということになる。

ポゼッションに差がついた17試合の結果を見ると、上回ったチームが勝ったケースが12(70%)、引き分けが3(18%)、負けが2(12%)。ポゼッションではっきり上回れば、7割の確率で勝てるということになる。

だが、それが勝利の絶対条件かといえば、決してそんなことはない。32試合から引き分け7試合を除いた25試合について見ると、ポゼッションで明らかに上回ったチームが勝ったのは、半分強の14試合(56%)にとどまるからだ。相手とポゼッションが互角だったチームが勝ったのが8試合(32%)、下回ったチームが勝ったのも3試合(12%)ある。

シュート数に関しても、相手のそれをはっきり上回った(+3本以上)チームの勝率は72%(引き分け20%、負け8%)と、比率的にはポゼッションとほぼ同じだ。下回ったチームが勝ったのは2試合にとどまる(いずれもコートジヴォワール)。

これらと比較しても、勝敗との関連性が文句なしに明らかなのは、枠内シュートの絶対数である。これが3本以下のチームが勝った例はひとつもなく、4~5本だと勝ち、引き分け、負けの比率が25:31:44となる。

ところが6本以上になると、この比率は84:8:8と大幅に跳ね上がるのだ。「枠内シュートが3本以下だと勝率ゼロ」「勝つためにはシュートを枠の中に6本以上収めることが必要」というのは、かなり信憑性の高いテーゼといえるだろう。

ちなみに、オーストラリア戦の日本は、ポゼッションが48%とほぼ互角ながら、シュート数では6対20、枠内シュート数も2対12と大差をつけられた。クロアチア戦では、56%のポゼションにもかかわらず、シュート数は12対16、枠内シュート数は5対6といずれも劣っていた。ポゼッションで大きく上回ったチームがシュート数で下回った試合は、ここまでこれが唯一である。

いくらボールを大事にしても、シュートを枠に打たなければ勝てない。データからもそれは明らかだ。ね、ジーコさん。■

(2006年6月20日/初出:『El Golazo』)

By tifosissimo

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。