2010年5月に出した2冊目の著書です。
帯にもある通り、『ワールドサッカーダイジェスト』で2001年から足かけ9年間に渡って続いているカルロ・アンチェロッティ監督との連載企画を加筆・訂正して再構成した待望の1冊です。版元は前著『モウリーニョの流儀』と同じ河出書房新社。
前著に関しては、なんで片野がモウリーニョ本なのか、という疑問を抱かれた方も多いと思いますが、これは納得していただけるでしょう。
以下にアンチェロッティによるまえがきをコピペしておきます。
もしご興味を持っていただけたら、書店で一度手に取ってご覧下さい。もちろん、AmazonなどのWEBブックショップで直接ご注文いただいてもOK。ご購入の上熟読いただければとても嬉しいです。どうぞよろしく。
はじめに
カルロ・アンチェロッティ
私が日本の海外サッカー専門誌『ワールドサッカーダイジェスト』に寄稿を始めたのは、ユヴェントスの監督を退いた後、充電のための時間を過ごしていた2001年秋のことだ。イタリア在住の日本人ジャーナリスト・片野道郎と、その時々に設定したテーマについて対話し、その内容を彼が日本語の原稿にまとめるという形でのコラボレーションは、それ以来現在まで定期的に続いている。
この本は、足かけ8年間にわたるその成果を1冊にまとめたものだ。したがって、この日本語版がオリジナルであり、現時点では唯一のバージョンということになる。
コラボレーションを始めてからこの本ができるまでの間、私はミランの監督として8シーズンを過ごしていくつかの重要なタイトルを勝ち取り、2009年の夏からはイングランドのチェルシーに仕事の舞台を移して現在に至っている。
その間に取り上げた話題は、私のサッカー観とそれに基づく戦術理論、具体的な試合を舞台にしたケーススタディ、さらには日々積み重ねている仕事の実際まで、監督という仕事のあらゆる側面に及ぶ。
それらを改めてテーマ別に整理したこの本を読んでいただければ、カルロ・アンチェロッティという監督の目にはピッチ上のゲームやそこで動く選手たちがどのように見えているのか、毎週の試合を準備する中で何を考え、どんな問題に直面しているのか、そして監督としてどんなキャリアを歩み、どんな試合を戦い、いかなる喜びと落胆を経験してきたのかという、その全体像が掴んでいただけるはずだ。戦術がその重要な側面であることに疑いはないが、決して全てではないこともおわかりいただけると思う。
読者のみなさんは不思議に思われるかもしれないが、このような本をイタリアで実現することはできなかった。「国民の数と同じだけの代表監督がいる」と言われるほど、サッカーはイタリア人の生活に浸透している。
しかしイタリアの人々が興味を持っているのは、何よりも毎週の試合の結果であり、それをめぐるあらゆる種類のドラマと人間模様だ。ここで主題となっている戦術や采配、チームマネジメントといったテーマを監督自らが取り上げた本は、イタリアにはまったく見当たらない。
これら、私の仕事の中心を占める、つまり私自身が最も興味を持っているテーマをじっくりと掘り下げる機会を得たこと、そしてそれを本という形にして日本のサッカーファンの皆さんに読んでいただけることを、非常に嬉しく思っている。その機会を与えてくれた河出書房新社、『ワールドサッカーダイジェスト』、そしてパートナーの片野道郎に、この場を借りて感謝したい。
サッカーを愛するすべての人々にとって、本書が、サッカーというゲームとその戦術、そして監督という仕事を、これまでとは違う角度から眺め、より深く楽しむきっかけになってくれれば、それほど嬉しいことはない。
なお、本書の印税の一部は、ミランとイタリア代表で私のチームメイトだったステーファノ・ボルゴノーヴォが設立した「ステーファノ・ボルゴノーヴォ財団」に寄付される。この財団は、ステーファノ自身が冒されている筋萎縮性側索硬化症(別名ルー・ゲーリッグ病)の研究を援助する基金を集めるために設立された。
彼だけでなく何人もの元サッカー選手を襲っているこの難病は、原因・治療法ともまだ明らかになっていない。その究明を少しでも速く進めるために力を貸すことができればと考えている。□