2017年1月12日発売の『footballista』2月号は「カルチョ再生計画」というイタリアサッカー大特集。立ち読みじゃ全然読み切れないと思うので、ご購入の上じっくりとお読みいただけると嬉しいです。

同誌には創刊以来「カルチョおもてうら」という連載を書き続けているのですが、、今回はイタリアのサッカー中継のクオリティの高さについて取り上げました。その中に収まりきらなかったのが、文中に訳出したイタリアの実況・解説と同じ場面(トリノダービー前半13分から15分の2分間)で日本の実況・解説がどんな内容だったかを書き起こした内容。

イタリアの実況・解説の方は『footballista』の誌面で読んでいただくとして(うしろから5ページ目にあります)、それに対応する日本の方の書き起こしをここに上げておきます。両方を比較してみると、本文中で触れた日本の実況中継のあり方(受け手にとってのハードルの高さをどこに設定するか)について考える材料になるかと。

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実況:さあアレックス・サンドロです。ストゥラーロにボールを出してファーサイドはマンジュキッチ。ここからケディラ!マンジュキッチに当たったんですがハートがよく反応しました。いやあハートは良く反応しましたね。
解説:足下でしたけど、コースがいきなり変わったのにハートはよく反応しましたね。
実況:さあもう一度チャンス。リヒトシュタイナーからふわっとしたボール。マンジュキッチ!何かシーズンを追うごとに調子が上がってきましたこのマンジュキッチ。
<ここでシュートシーンのリプレイがインサートされる>
最近はイグアインが、残念ながらカンピオナートではゴールを決めていません。むしろマンジュキッチの方がゴールを挙げて来ている。だからユヴェントスにとっては非常にいい流れですよね。
解説:そうですね。この組み合わせの時にはどうしなければいけないかというのが、徐々に見えてきていると思うんですよね。シーズン後半に重要な試合をたくさん控えてますから、誰がもしどういうタイミングで欠けても対応できるように、前半戦から積み重ねていっているというか、経験値を増していってる感じはしますね。
実況:チームの得点源であるイグアインが、残念ながら10月29日以降まだ得点がありません。そんな中このマンジュキッチが調子を上げてきてここまで4ゴール。昨日29歳の誕生日を迎えたイグアインです。
解説:ユヴェントスはチャンピオンズリーグも含めて非常に多くの試合でいろんなバリエーションを使っているので、どれを使っても100%機能するようにするにはやはり時間がかかると思うんですよね。それを今急ピッチで進めていると思うので、それに勝利もついてきていますから、非常にいいと思いますね。
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(2017年1月13日)

By Michio Katano

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げ、カルチョそして欧州サッカーの魅力をディープかつ多角的に伝えている。 最新作は『チャンピオンズリーグ・クロニクル』(河出書房新社)。他の著書に『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)、『モウリーニョの流儀』(河出書房新社)、『モダンサッカーの教科書』(共著、ソル・メディア)、『アンチェロッティの戦術ノート』(共著、河出書房新社)、『セットプレー最先端理論』(共著、ソル・メディア)、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』(共著、光文社)、訳書に『アンチェロッティの完全戦術論』(河出書房新社)、『ロベルト・バッジョ自伝』(潮出版社)、『シベリアの掟』(東邦出版)、『NAKATA』(朝日文庫)など多数。