◆12月27日

「先日ローマでセンシ会長と中田について話し合い、もし中田を放出するとしたら、ローマに優先権を与えるとは約束した。これは公に認める。私は今でもローマを愛しているし、ローマのサポーターからも、ガウッチはいい贈り物をしてくれたと感謝されたい。いずれにしても、中田の所有権はペルージャにある。来年どこに行くかを決めるのは私だ」
(ルチャーノ・ガウッチ/ペルージャ会長)

「中田を放出するということは、チームを弱くするということだ。だからもしそうするなら、同等の選手を獲得してくれなければ困る。彼を放出してもいいか、と聞かれたら、私自身はノーと答えるだろう。中田はあまりにも重要な選手だ」
(カルロ・マッツォーネ/ペルージャ監督)

◆12月28日

「中田、ミランとローマの板挟み」(Corriere dello Sport紙見出し)

「原則的にいって中田は今すぐには売れない。ペルージャにとって有利な交換トレードができれば話は別だが、それは難しいだろう。中田移籍の噂は昨日、今日に始まった話ではないが、私の頭にあるのはペルージャをより強くすることであって、その逆の結果につながるようなことをするつもりはない。売るとすればそういう条件が整ったときだけだ」
(ルチャーノ・ガウッチ/ペルージャ会長)

◆12月29日

「中田、ローマへ:今日にも決定か?」(Gazzetta dello Sport紙見出し)

「中田の代理人はしらばっくれているようだが、(ペルージャとの)合意はもう成立している。中田はローマに来る」
(フランコ・センシ/ローマ会長)

「ビッグクラブが関心を示してくれるのは嬉しいが、少なくとも今シーズン一杯はペルージャに残りたいと思っている。先のことはまだ何もわからない。今言えるのは、ローマとミランが偉大なチームだということだけ。

他のクラブからのオファーがあれば、代理人のブランキーニとクラブが検討することになるだろう。いずれにしても、シーズン終了まで、ペルージャがさらに順位を上げるのに貢献したいというのがぼく自身の希望だ」
(中田英寿)

「ヒデはむしろミランに行きたいと思っていたようだ。チームもミラノの町もお気に入りのようだし、何よりもミランならレギュラーの座はほぼ間違いない。逆にローマだと、トッティの控えで終わる危険もある。厳しいポジション争いにさらされるのは彼も嫌だろう」
(ペルージャの某選手)

「中田は素晴らしい選手だと思う。イタリアに来てからの2年間で示した実績は、誰にとっても驚くべきものだった。これだけの選手が日本にいるなんて、だれも想像すらしていなかったのだから。多くのチームが中田を狙っているのも当然だろう」
(マルコ・デルヴェッキオ/ローマ)

◆12月30日

「中田のローマ移籍はまだ道半ば」(Corriere della Sera紙見出し)

「(96年に日本で対戦した19歳の中田は)すでにブラヴィッシモだった。それに、我々外国人選手から少しでも多くを学び取ろうという姿勢もはっきり見て取れた。もし中田がローマに来ればそれほど嬉しいことはない。

素晴らしい選手だから、クラブにとって重要な補強になることは間違いない。トッティとポジション争いになるんじゃないかって?さあね。それはカペッロ監督が考えることだ」
(アントニオ・カルロス・ザーゴ/ローマ)

「中田?素晴らしい選手だ。同じトップ下のポジションだから、カペッロはぼくと彼のどちらかを選ばなければならなくなるだろう。2人同時にプレーすることも可能かもしれないが、その時はデルヴェッキオかモンテッラのどちらかが外れることになるだろう。

4人同時にプレーすることもできるかもしれないが…。もしそれが問題になるようなら、ぼくはローマを出ても構わない。ポジション争いをするのは性に合わない。それに、移籍してきたからというだけで、彼がすぐに試合に出られるわけではない。試合に出るに値する選手がプレーするというのが原則だ」
(フランチェスコ・トッティ/ローマ)

「(中田が)出ていくことになるのかどうかはわからない。しかし、もし出ていくとすれば、それはあくまでクラブの選択であって、監督としての私の選択ではない。彼の代わりに獲得するのは、私の要求を満たした選手でなければ困る。そうでない選手を受け入れるつもりはない。ペルージャのような地方の中小クラブの財政事情は理解できるし、中田の心情も理解できる。

彼は私が来てから、フィジカル的にも戦術的にも大きく成長したし、今ではホームでもアウェイでも全く同じようにプレーできる。チームメイトも真っ先に中田を捜すようになった。どんな選択をするにしても、中田が更に偉大な選手になることを祈っている。あとはクラブの決断次第だ」
(カルロ・マッツォーネ/ペルージャ監督・12月30日)

「私は、いい選手がひとりでも多くローマに来ることを願っている。中田とトッティの共存が問題?トップクラスの選手は試合に出てプレーするのが当然だ。それをどうやって実現するかを考えるのが監督の役目。中田は複数のポジションに対応できる選手だ。中盤でも役に立つことは間違いない」
(ファビオ・カペッロ/ローマ監督・12月30日)

◆12月31日

「中田、トッティを不安に陥れる」(Gazetta dello Sport紙見出し)

※この5日間で中田のローマ移籍を巡る騒動は一段落。第二幕は、現在ロナウドと共にブラジルでヴァカンス中の代理人、ジョヴァンニ・ブランキーニがイタリアに戻る週末以降になる見込み。ちなみに、冬の移籍マーケットは1月3日から31日まで。今月中に交渉が成立しない場合は、シーズン終了まで移籍はなくなる。

By tifosissimo

片野道郎(ジャーナリスト・翻訳家) 1995年からイタリア在住。ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を拡げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。 著書に『チャンピオンズリーグの20年』、『増補完全版・監督ザッケローニの本質』、『アンチェロッティの戦術ノート』、『モウリーニョの流儀』がある。『アンチェロッティの完全戦術論』などイタリアサッカー関連の訳書多数。